2017年04月01日

ベッティーナ・グラツィアーニを偲んで In memory of Bettina Graziani

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1940年代〜1950年代、フランスのファッション・モデルとして知られたベッティーナ・グラツィアーニ Bettina Graziani が一昨年、2015年3月に亡くなっていたことを(享年89歳)、ビリーボーイの新刊 "FROCKING LIFE Searching for ELSA SCHIAPARELLI" を読んで知った。

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彼女は、1925年フランス・ノルマンディー地方に生まれ、 1940年代からファッション・モデルとして活躍、1950年代にはジバンシーのミューズとして一躍脚光を浴び、20世紀初のスーパーモデルの一人としてファッション史にその名を刻んだ。又、プライベートでは、パキスタンの王子アリ・カーン Aly Khan との大恋愛と悲劇(1960年、自動車事故でカーンが死亡)が知られている。因みに、ビリーボーイの本には、彼女がパブロ・ピカソからも求愛されていたことが書かれている。

このベッティーナはビリーボーイの大親友であったが、そもそも、彼女がビリーボーイの才能とキャラクターを愛し、まるで母親のように彼の活動を応援していた。そしてミドヴァニィが誕生した時は、そのコンセプト・カタログやポスターの為に、自らポーズを取り、ミドヴァニィ・ファッションの魅力を広めることに一役買ってくれたという。確かに、最初のカタログのファッション・イラストからは、ベッティーナの面影が感じられ、パリ・オートクチュールの魅惑が伝わってくる。

私がベッティーナに会ったのは一度だけである。それは、1990年代初頭の12月、パリのシェルシェ・ミディ通りにあったミドヴァニィ・ブティックでビリーボーイと打ち合わせをしていた時のこと。突然、ドアが開き、長身の素敵なフランス人女性が入ってきた。肩までかかる赤味を帯びたブラウンのカーリーヘアーに真っ赤な口紅、黒いタートルネックのセーターの上に艶やかな黒いレザーのジャケット、同じく黒いレザーのミニスカートを穿き、黒いストッキング、手にはシックで使い勝手のよさそうな、やや大きめのハンドバッグを持っていた。すぐさまビリーボーイから「ベッティーナだ」と紹介される。彼女は、びっくりしている私に、手を差し出し握手を求めてきた。普通、トップモデルとか女優と言えば、人を寄せ付けないような近寄りがたい雰囲気を持っているものだが、ベッティーナは違った。初対面にもかかわらず、昔から知っている親戚のオバサンの様な親しみやすい、とてもチャーミングなオーラを全身から放っていて、私はすぐにリラックスすることができた。私たちは何を話したか殆ど覚えていない。しかし、忘れられない一瞬があった。それは、ビリーボーイが私たちを写真に撮ろうとした時である。ビリーボーイがカメラを向けた途端、それまで、くだけた姿勢で会話を楽しんでいたベッティーナが、瞬時にして、左手を腰に当て、右手を左足の太ももの上に置き、両足をエレガントに整え、見事なポーズを決めて、カメラに向かい嫣然と微笑んだのである。それがトップの写真。完全無欠なトップモデルのポージングであった。どんな状況においても錆びることのないプロ意識に脱帽。見習いたいと思った。
ベッティーナといたのは僅か30分位だったと思う。それにも拘わらず、今でも、彼女のカッコ良さとチャーミングな顔、温かい眼差しが脳裏に蘇ってくる。

ベッティーナ・グラツィアーニのご冥福を心よりお祈りいたします。

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posted by sumiko at 18:22| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | News | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする